外科医局の午後・28
臓器移植
岡崎 誠
1
1市立伊丹病院外科
pp.266
発行日 2007年2月20日
Published Date 2007/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101756
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北朝鮮核実験のニュースにやや隠れた感じはするが,昨年,わが国における腎移植手術で臓器売買が発覚し,臓器提供者および受容者がともに臓器移植法違反の疑いで逮捕された.移植を担当した医師は腎移植手術のカリスマで,手術の承諾書を取っていなかったと批判を受けている.また一時は,暗に臓器売買に関与したのではないかと疑われた.本来,生体腎移植は親族間だけと定められているが,これはあくまで患者の申告であり,今回のように提供者が患者の「妻の妹」と言われれば,信じざるを得ないであろう.生体移植は医師も患者もお互いの信頼関係と提供者の「善意」によって成り立つ医療である.あくまで人間の「性善説」を前提にしており,疑いだすと,とてもこの種の医療は成り立たない.
しかし,これはあくまで建前論である.「移植医療」は単純でなない.移植後進国と言われたわが国で臓器移植法が制定され,生体の移植手術が再開されてから,それほど多くの日は経過していない.提供臓器の圧倒的な数不足は当初から指摘されていた.実際,腎移植でも移植希望者が腎臓に恵まれる確率は1/70程度らしく,これでは別の方法を考えねばほぼ無理ということである.小児の移植をアメリカやオーストラリアで受けるため,多くの寄付を集めて外国人の臓器を移植される(ある意味,金銭で買う)のは自国の臓器を他国の人が金銭で買ったとも受け取られ,臓器売買の「金銭授受」と倫理的にどの程度変わりがあるかはいささか疑問である.
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