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はじめに
「臓器の機能が廃絶すると,腎では透析療法があるが,他臓器では人工臓器があっても短期間しか使用できない.したがって生命維持のためには臓器移植が不可欠である.歴史的にはカレル(1905年)らによる血管吻合法の開発,メダワー(1944年)らによる拒絶反応の発見などが移植医療に大きく貢献してきた.移植には生体臓器移植と死体臓器移植とがあって,腎,肝,心,肺,小腸,角膜,皮膚,骨髄等の臓器や組織の移植が行われている.移植医療では臓器提供者(ドナー)と臓器受領者(レシピエント)の血液型や組織適合試験,拒絶反応など,問題も多いが,免疫抑制剤の進歩により,ABO血液型不適合間の移植も行われ,臓器の生着率も向上している.」
「医学大辞典,第2版」(医学書院)では臓器移植について,上記のように説明している1).
臓器移植はさまざまな工夫により著しい進歩を遂げている.移植後の生存率は向上しているが,移植待機期間中の廃用症候群や,免疫抑制といった強力な治療によって引き起こされる患者の身体機能低下,QOL(quality of life)低下が指摘されている.臓器移植は自家移植以外では,ドナーからの提供が前提であり,レシピエントは提供を受けることにより生命予後やQOLを向上しうる医療でもある.そのような医療のなかで,リハビリテーションは患者の身体機能,QOL向上の一端を担う.
現在の臓器移植患者のリハビリテーションは,運動療法,患者教育,薬物療法,栄養管理,社交活動,精神的サポートなどのさまざまな要素から成り立っており,障害された臓器によってそれぞれに特有な要素があることを考慮して行われる.本稿では臓器移植前後のリハビリテーションについて述べる.
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