連載 感染症 Up to Date・28
最近の食中毒の動向
尾崎 米厚
1
1国立公衆衛生院疫学部
pp.86-87
発行日 1998年1月10日
Published Date 1998/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901723
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食中毒とは何か
食中毒food poisoningの定義は,「伝染病予防必携』1)によると以下のとおりである。「食中毒とは食品に起因する急性胃腸炎及び神経障害などの中毒症の総称である。食中毒菌あるいは化学性毒物で汚染された食物の喫食により集団的に発生する。伝染病が二次発生を起こすのに反し,食中毒は細菌性のものであっても一峰性の発生の様相をとり,通常,二次発生を見ないのが特徴である。一般に食中毒には,自然毒(ふぐ,毒かます,毒きのこ,じゃがいもの芽,青梅など)や食品添加物あるいは混入毒物(着色料,保存料,容器などで有害なもの,殺虫剤,殺鼠剤,農薬など)によるものも含まれる」1)
食中毒に関連する用語に「腸管感染症」「伝染病」「食品媒介疾患foodborne disease」がある。「感染」とは「病原体が,ヒトや動物の体内に侵入して,発育または増殖すること」1)であり,発病に至る「感染症」とは区別されている。「伝染病」は,「特定の病原体またはその毒性産物が,感染しているヒト,動物または病原巣から感受性のある宿主に伝播されて起こる疾病」2)とされている。これは「感染症」に加え,毒素型の食中毒も含めていると言える。『食中毒の正しい知識』3)には,細菌以外にもウイルスや寄生虫でも食中毒を起こすと記載してある。
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