病院職員のための医学知識・18
最近の食中毒
斎藤 誠
1
1都立荏原病院
pp.72-73
発行日 1974年6月1日
Published Date 1974/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205377
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いわゆる伝染病と食中毒との関係についてご教示ください.
食中毒とは,食物を摂取することによっておこる急激な健康障害を意味します.巷間いわれるように食品の腐敗が原因でなく,食品中でサルモネラ,腸炎ビブリオ,ブドウ球菌が増殖することによっておこる細菌性食中毒,動植物の自然毒(ふぐ,きのこなど)や化学物質による化学性食中毒に分類されます.
細菌性食中毒は中毒事件の約半数,発生患者数の60-80%を占めており,症状的には急性胃腸炎,赤痢症状を発現し,伝染病である細菌性赤痢と誤認されることが多いのです.この細菌性食中毒は,食品中で病原がヒトを発症させるほど大量に増殖し,この食品を摂食することによっておこる感染型食中毒(サルモネラ,腸炎ビブリオ)と,細菌が増殖する過程で食品中に毒素が産生され,これを摂食することによっておこる毒素型食中毒(ブドウ球)に分かれます.いずれの場合でも病原が食品中で増殖することが前提となっており,その増殖菌数は107-8個と常識的には考えられています.このような大量の菌は,食品中で増幅することなく直接的にヒトからヒトへの感染は考えられません.
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