今月の主題 食中毒,その発症をめぐって
巻頭言
わが国における食中毒発生の最近の動向
三瀬 勝利
1
Katsutoshi MISE
1
1医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構
pp.457-458
発行日 2003年5月15日
Published Date 2003/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101174
- 有料閲覧
- 文献概要
食の安全が叫ばれ,関係者の日夜の努力にもかかわらず,食中毒の発生は少しも減少していない.保健所に届けられた数だけでも,年間3~4万人もの食中毒患者が出ている.届けられる事例は氷山の一角であり,実際の食中毒患者数はその百倍を超えると思われる.少なく見積もっても,年間数百万人の食中毒患者が出ている計算になる.幸い,医療の進歩や食料事情の好転により,食中毒による死者はほとんど出なくなっている.この点は極めて良い傾向といえる.
食中毒の原因物質としては,細菌が圧倒的に多く,ウイルスがこれに次いでいる.フグなどの動物毒や,毒草や毒キノコなどの植物毒を摂取することによる食中毒も毎年発生している.発生件数は少ないが,死者の多くは動物毒や植物毒を摂取したケースで起こっている.農薬などの化学物質による食中毒は稀である.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.