連載 病と看護の視座—リンダ・リチャーズの人と思想・8
英国留学
小野 尚香
1
1大阪大学医学部保健学科
pp.922-926
発行日 1997年11月10日
Published Date 1997/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901664
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米国における近代看護発生の年とされる1873年,リンダ・リチャーズLinda Richardsは,「米国最初の有資格(訓練された)看護婦America's first trained nurse」となった。リチャーズは,その後,ベルビュー病院Bellevue Hospitalの夜間看護監督,マサチューセッツ総合病院看護学校Massachusetts General Hospital Training School(Boston)の校長職を経て,1877年春に英国に渡る。看護婦を養成し管理するための方法論について学ぶために,セント・トーマス病院St. Thomas' Hospital内にある看護学校Nightingale Training School訪問を希望していた。
セント・トーマス病院に着いて数日もたたないうちに,リチャーズはナイチンゲールFlorence Nightingaleからの招待を受けた。ナイチンゲールの業績とその名声は,当時すでに,欧米諸国に広く知られていた。しかし,病身のために,彼女は外出はもちろん面会も容易にはできなかったという。リチャーズは感激に震えながら,黒い絹の服に身をつつんだ小柄な女性と向かい合った。澄んだ青く優しいまなざしと,歓迎の握手に迎えられた。ナイチンゲール58歳,リチャーズ35歳のときであった。
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