特集 保健婦活動とボランティア
住民主体の地域福祉活動と保健婦の役割を探る—障害老人のサロン活動を通して
小林 早智子
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1社会福祉法人愛生会特別養護老人ホームあじさいの里開設準備室
pp.886-893
発行日 1997年11月10日
Published Date 1997/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901659
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はじめに
今年の7月21日,私は大阪市の北港ヨットハーバーで,生野区の3つのサロン(ミニデイサービス)のお年寄りたちが到着するのを待っていた。『お年寄りとヨットに乗ろう!』というこの企画は,大阪市の帆船「あこがれ」のボランティアグループ・ウィンズのアイデアで,障害を持つお年寄り約80人が参加した。2台のマイクロバスと車いすを積んだワゴン車が到着すると,私の姿を見て手を振る人,窓を開けて声をかける人,みんなお揃いの船の絵のTシャツを着て,とても輝いて見える。マイクロバスから降りるのに,町会長が「この人は1人で降りれる。この人はおんぶして。この人はここを支えて!」と指示している。「すごい!」。去年の一泊温泉旅行では,汗をかきながら力まかせに全員を全介助をしていた町会長の対応の変わりぶりに私を目をみはった。
今回の『お年寄りとヨットに乗ろう!』に関しては,私は企画を伝えただけで,車の手配などの準備はサロンのボランティアや地域ネットワーク委員会(後述)などのマンパワーで全部行った。自主的に3つのサロンが連絡を取り合って,一緒に参加してきた。海辺のテントの中には,地区担当保健婦が夫と子どもと一緒にニコニコ顔で参加している。彼女も今回は何にもせず,楽しみに来ている。「気持ちよかった!」「生まれて初めてヨットに乗った!」。お年寄りもボランティアも心から楽しんでいる。私は改めて地域の持つ力に感動を覚えた。
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