特集 災害時における公衆衛生—阪神・淡路大震災から学ぶもの
災害時の公衆衛生と保健婦—阪神・淡路大震災から保健行政が学ぶこと
高鳥毛 敏雄
1
1大阪大学医学部公衆衛生学教室
pp.600-605
発行日 1996年8月10日
Published Date 1996/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901394
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はじめに
公衆衛生とは住民の健康の保持とその増進を図ることにある。その意味では住民の生活に多大な影響をもたらす災害の発生に際しては重要な役割が存在しているはずである。公衆衛生活動は行政の枠組みの中で実施されることが多く,災害時の公衆衛生活動についても公衆衛生関係法規をはじめ,災害対策基本法などの災害関係法規などに基づいて展開される現状にある。
しかしながら,今回の大震災によって現れた,長期にわたる大量の避難所生活者や仮設住宅入居者に対する健康管理ならびに生活支援,またそこに生活する高齢者の問題を考えるならば,このような保健課題に対応していくには制度を充実させていくことに加えて,公衆衛生活動を自律的に展開していく能力の強化が必要であることが痛感された。そういったことから,本稿ではわが国の災害時の保健行政の役割とされている現状を整理した上で,今回の大震災に伴い保健婦ならびに保健行政担当者がそこから何を学んだのかについて,また災害時にも通用する保健行政ならびに保健婦活動とはどのようなものかについて考えてみることにする。
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