特集 保健所の機能強化を考える
保健所機能強化論
専門的技術的支援
[事例]保健所の痴呆老人のケアシステム
辻 元宏
1
1滋賀県草津保健所
pp.1074-1079
発行日 1995年12月25日
Published Date 1995/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901285
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はじめに
痴呆老人対策は市町村ゴールドプラン作成により関連職種数と処遇施設整備を計画目標とすることで,福祉指導型で行われようとしている。そこには保健の痴呆予防の概念の導入はなく,単なる処遇痴呆という,行政職でもできる施策側面が際立ってきた。しかし痴呆という障害の処遇数は,社会状況や家族環境により影響されるものであり,21世紀に向けてその数は膨大化し,常に計画の見直しを迫られ,最終的にその数に見合う関連職種や処遇施設の整備は不可能になると考えられる。また痴呆は重度になればなるほどそれに費やす多大な人的エネルギー,経済負担が必要となり,少子化のキーワードと両輪となって奈落へ突き進むと考えられる1)。このままでは痴呆の予防という概念が定着化せず,マンネリ化した終末処理として福祉対策が優先されていくであろう。
公衆衛生審議会の「老人精神保健対策」についての意見具申中の『I老人の痴呆疾患の予防及び普及啓発』に「一般に老人の痴呆疾患に対して悲観的見方が根強いので適切な予防,治療を行うことにより社会復帰が可能である」と,昭和57年にすでに述べられている。しかし,その方法論を考え実践した市町村を見出すのは困難である。
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