研究
痴呆性老人の初期症状としての尿失禁に関する研究
堀井 とよみ
1
,
関谷 はる江
1
,
辻 元宏
2
,
田崎 正善
2
,
鎌田 昭二郎
3
,
滋賀県水口保健所一同
1滋賀県水口町役場
2滋賀県厚生部医務予防課
3滋賀県レイカディア財団
pp.568-577
発行日 1991年7月10日
Published Date 1991/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900275
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はじめに
水口町では昭和55年に10.6%であった老人人口が平成元年には12.1%と増加し1),この増加に伴い痴呆性老人の問題も表面化してきた。そこで水口町では平成元年度〜2年度に,痴呆性老人在宅ケア調査事業を実施した2)。元年度は痴呆性老人の実態把握と早期発見を目的に,在宅老人生活実態調査と同時に,滋賀県が取り組んでいる尿失禁調査をあわせて実施した。その結果,尿失禁は初期痴呆症状の1つであると考えられる事実が発見できた3,4)。明らかな痴呆症状が出現してから,その痴呆の一症状として尿失禁が発現することは,日常の保健婦活動の中で経験しているところであるが,水口町が実施した本調査では,老人が痴呆症状を呈する前から尿失禁が認められたことが明らかになった。
尿失禁には,その発生機序から腹圧性尿失禁・溢流性尿失禁・切迫性尿失禁等に分類されるが5),本調査では尿失禁老人で痴呆群と判定された大半が切迫性尿失禁を呈していた。切迫性尿失禁の主な原因は,大脳の抑制性神経系の障害と考えられている。またこの部位の萎縮が脳血管性痴呆と老年期痴呆でみられる尿失禁に関連することが指摘されている6)。
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