特別寄稿
老人虐待への危機介入の一例
徳永 雅子
1
,
文谷 裕子
2
1世田谷区玉川保健所
2世田谷区梅丘保健所
pp.997-1002
発行日 1992年11月10日
Published Date 1992/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900612
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はじめに
近頃,「虐待」は地域保健の分野でも関心が持たれている。特に子どもの虐待は,大阪で1990年に児童虐待防止協会が設立され,東京でも翌年には市民レベルで子どもの虐待防止センターが設立4)された。今ではセンターに,日々母親などから相談の電話があり,保健所とも連絡を取り合いながら介入するようになってきた。虐待は弱い存在の子どもだけに向けられるのでなく,年老いた老人に対しても昔からあったということが,今昔物語集などに語られている2)。映画『楢山節考』で,息子が自分の母親を背負い,山に捨てに行く姥捨の話も1つの虐待と言えよう。
しかしながら,その老人虐待についてはまだ一般的ではなく,言葉にするのも憚られるというのが私たちの気持ちではなかろうか。最近は保健所の相談も老人問題が急増しているが,虐待の側面からの症例報告はなく,世間の関心も低いようである。
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