特集 高齢社会と住まい
住まいと健康を考える
萩田 秋雄
1
1筑波技術短期大学建築工学科
pp.511-515
発行日 1992年7月10日
Published Date 1992/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900519
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住まいとは何か
保健婦とは「保健事業に従事することを業とする女子」(保健婦助産婦看護婦法)とされている。こうした形で規定されている保健婦の職能を,人間の健康を監視し,守り,増進させることにあると理解し,本論では住まいと健康の問題について論じたいと思う。
そもそも住まいとはどのような役割をもったものなのだろうか。写真1は東京で見かけたホームレスピープルである。70歳近いとおもわれるおばあさんである。ダンボールで「すまい」をつくりその中で寝ている。この「すまい」は住まいの持つ,もっとも基本的な機能を端的に表している。ダンボールは断熱性能を持っている。大地からくる冷気,風,雨,雪などから身を守り,自分の体温が低下しないようにしているのである。しかしこのダンボールの「すまい」は落下物や侵入者に対してはきわめてもろい。通常の住まいは屋根や柱や壁をもって作られており,落下物や侵入者を防御することができる。すなわち住まいの第1の機能は人間の体温低下,物理的圧迫,外敵などから身を守り,人間の命を守ることにある。
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