トピックス
住まいと健康—建築衛生学
池田 耕一
1
1国立公衆衛生院建築衛生学部
pp.678-682
発行日 2001年9月15日
Published Date 2001/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902993
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住は衣食と並ぶ生活の3大要素であり,健康で快適な暮らしの実現には,欠くことができない.しかし,医学の分野では食や衣に関する教育に比べ,住に関する教育は極めて不十分である.この原因の一つに,健康で快適な暮らしのための指導を行うべき医学者側の,住に関する理解が十分でないことがある.本稿では,公衆衛生における住教育の重要性を考えるきっかけとして,最近何かと話題になることの多い,いわゆるシックハウス問題などを例にとり,健康な住宅はどうあるべきかなどについて解説する.
わが国におけるホルムアルデヒドや揮発性有機化合物などの化学物質による住宅などの一般環境室内における空気汚染問題(シックハウス問題)は,極めて大きな社会的関心を呼び,1997年の6月には,当時の厚生省から住宅室内におけるガイドライン値がホルムアルデヒドについて設定された1).また,2000年6月にはトルエン,キシレン,パラジクロロベンゼンのガイドラインについて,9月には,エチルベンゼン,スチレン,クロルピリホス,ブタル酸ジn-ブチルについてもガイドライン値が設定され,さらに「暫定値」とはしながらもTVOC(総揮発性有機化合物)の指針も示されている.このような状況を受け,日本の各業界もこの問題が社会的に知られはじめた1995〜6年頃に比べると,前向きな姿勢で取り組みを開始しているようで,建築物の衛生にかかわる公衆衛生の仕事をしている者としては,一応安堵しているというのが,正直なところである.
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