特別寄稿
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)[1]—その病院内における意味づけ
村井 貞子
1
1東邦大学医学部公衆衛生学教室
pp.281-286
発行日 1992年4月10日
Published Date 1992/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900461
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はじめに
昨年秋,厚生省は近年急速に問題化してきたMRSAに対処する方向を示し,12月には「医療機関における院内感染対策の実態についての研究」の課題のもとに,全国500床以上の病院を対象として,MRSAの感染状況および感染防止対策に関するアンケート調査を始めた。このように現在最もセンセーショナルに扱われている細菌の1つであるMRSAとは,一体何であろうか。すでに多方面で集積されているMRSAと院内感染に関する知見に,私共が持つ若干の事実を加えて考えてみる。
Methicillin Resistant Staphylococcus aureusメチシリン耐性黄色ブドウ球菌,略してMRSAと言われる細菌は,欧米ですでに1961年1)に最初に報告されており,1960年代後半には臨床的2)に問題となったが,それ以降は日本におけるような取り上げ方はされずに経緯した。一方,日本では1980年代になり急速に増加し3),後半には院内感染の原因菌として浮上した特殊な性質を持つ黄色ブドウ球菌である。
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