連載 ケーススタディ—アルコール依存症への理解と援助・6
回復がみえないアルコール依存症者への関わりを続けて
小池 典子
1
,
市川 真紀枝
2
1東京都豊島区長崎保健所
2東京都世田谷区玉川保健所
pp.238-245
発行日 1992年3月10日
Published Date 1992/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900453
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はじめに
東京都の保健所でアルコール問題の地域ケアのシステム作りが始まったのは,10年程前である。保健婦はアルコール依存症を「対人関係の病」としてとらえ,以前に比べ積極的に関わるようになり,それに伴いケースの生き方まで含めた回復をみることも多くなった。
ここで紹介する安藤さんという1人のアルコール依存症者に対して,保健婦は地域ケアを行なってきた。途中で地区担当保健婦の交替があり,前半は小池が,後半は市川が関わり,安藤さんへの支援が続けられている。しかしその関わりが難しく,なかなか彼が酒をやめるという回復にはつながらなかった。時には回復が見えず絶望感を感じたこともあったが,地域ケアのサポートシステムに支えられ関わり続けることができた。そして関わりを続ける中から1人のアルコール依存症者の生き方,様々な問題を抱えながら生きている姿が見えてきた。同時に底つきの難しさ,アルコール依存症者への対応を学ぶことができた。
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