特別寄稿
痴呆性老人に対するロングステイケアの現状と課題
工藤 禎子
1
1日本社会事業大学
pp.130-134
発行日 1992年2月10日
Published Date 1992/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900428
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はじめに
現在,わが国の痴呆性老人は約100万人にのぼり,そのうち約8%を占める8万3000人が特別養護老人ホームで生活しているといわれる1)。また,近年急増している老人保健施設をはじめとして,老人性痴呆疾患専門治療病棟,老人性痴呆疾患療養病棟など,数か月に渡るケアを担う施設が近年整備され,そこにおける痴呆性老人は,2万人以上と推定される。ケアの期間(term)は1か月以内をショート,2〜3か月をミドル,それ以上をロングステイケアと考えられるが,上記の数からみると痴呆性老人の10%以上がロングステイケアを受けており,痴呆性老人対策において,その機能は大きなものとなっている。
保健福祉のモデルとして知られる北欧諸国のシステムにおいては,在宅ケアの充実により身体障害であれば,どのような重度の障害でも在宅で生活を続けられるような援助が実現されているが,これらの国においてさえも痴呆性老人を在宅ケアで支えるには,限界がみられている。俳徊や火の始末などの症状に対して,最低限の安全を守るためには常に援助者が近くにいることが求められるという点で,他の障害とは異なる痴呆の特性が問題になる。これに対して援助者の目が届く形態として,グループホームと呼ばれる5〜6名の小集団の居住型ケアが主流になりつつある2)。
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