特集 痴呆性老人と家族を支える
痴呆性老人対策の現状と課題
大塚 俊男
1
1国立精神・神経センター精神保健研究所
pp.98-104
発行日 1992年2月10日
Published Date 1992/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900423
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はじめに
他の先進諸国に類をみない程の速度で高齢化が進んできているわが国では,老年人口の増加とともに痴呆老人の数が著しく増加してきて,今や大きな社会問題にまで発展してきている。
厚生省の1991年3月の発表によると,痴呆性老人は1990年現在,65歳以上の老人人口の6.7%を占め,その数は99万人(そのうち在宅の痴呆性老人は75万人を占める)で,5年後には約123万人,10年後には約150万人に達すると推計されている。しかも痴呆の治療は困難であり,ケアが中心となり,また長期間のケアが必要となることが多い。現代社会は核家族化の進行や介護者の確保が困難となってきたことと,老人を扶養してゆこうとする意識が低下してきたことや住宅事情などから,在宅でのケアがなかなか困難となってきている。そのため痴呆性老人に対する社会対策の重要性が増加してきている。そこで,痴呆性老人のために実施されている社会対策の概要と,今後の課題について述べる。
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