保健婦活動—こころに残るこの1例
痴呆性老人とのかかわりを通して
岡本 咲子
1
1宮城県栗原保健所保健指導課
pp.570
発行日 1990年8月15日
Published Date 1990/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900157
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大崎保健所岩出山支所は,宮城県西北部(人口約67,000人)の純農村地区6町を管轄している.管内の老齢人口は15.8%,年少人口は24.4%で高齢化が進んでいる.このことは,日常の保健活動のうえでも確実に保健問題として比重を増している.今回痴呆性老人と介護者である妻が,近所の人々や,保健所で実施している痴呆性老人ウィークリーケア「元気会」の仲間とのかかわりを通し,お互いに自分らしい生活ができるようになったので紹介する.
〔背景〕Kさん81歳.家族構成は妻69歳(介護者)と長男夫婦,孫の5人である.25歳で農家の婿になり大勢の家族に仕える.妻が2人の子供を出産後病死したため,子供と共に家を出される.その後現在の妻と再婚し,農業をしながら6人の子供を育てる.性格は温厚,まじめで人からの信望も厚く,働き者で有名だった.76歳ころより健忘症状,見当識障害,嫉妬妄想などが現れ,脳梗塞という診断で3回の入退院を繰り返す.症状は年々すすみ,平成元年6月ころより夜中に「男がいる」と言って騒いだり,俳徊や見当識障害が著明になり,常時介護を必要とする状態で妻が介護に疲れ果て,保健所に相談に来た.
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