連載 —海外文献紹介—Current Nursingピックアップ・11
痴呆性老人の転倒とケアの課題
北川 公子
1
1北海道医療大学看護福祉学部
pp.152-155
発行日 1995年2月1日
Published Date 1995/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904741
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ここ数年,老人の身体活動能力の低下に影響を与える転倒の問題が,保健医療の領域で関心を集め,盛んに研究が進められている.すでにいくつかの関連要因が提示されており,痴呆もリスクファクターの1つと考えられることが複数の文献の中で述べられている1)2).転倒に起因する骨折等からの回復の困難さを考えると,痴呆性老人のケアにおいて,転倒の予防は重要な課題といえる.しかし,当事者本人から情報が得にくいという調査上の制約のためか,痴呆性老人の転倒問題にテーマを絞った論文は,非常に少ない.
モーリス(John C.Morris)ら3)は,新聞,ラジオ等のマスメディアを通じて募った軽度アルツハイマー型痴呆群(n=44)と知的な機能低下のないコントロール群(n=56)を対象に,約4年間にわたって転倒発生状況を縦断的に調べている.転倒発生を本人や家族からの電話連絡で把握するため,より印象深い「治療を要する程度以上の転倒」に限定したうえで,このような重症度の高い転倒が,追跡した4年間にコントロール群で6件,痴呆群では3倍の16件発生していた(p<.005).そして最終的には,アルツハイマー型痴呆であることは,脳神経系の障害レベルや内服薬の数より以上に転倒の重要なリスクファクターであると結論づけている.
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