連載 保健婦日記
死の準備
金本 恵美子
1
1滋賀県安土町役場
pp.630-631
発行日 1991年8月10日
Published Date 1991/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900288
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四十九日
若干三十八歳の町会議員A氏の妻が乳ガンで亡くなって、明日は四十九日である。私は白とピンクとクリーム色のバラの花束を持って、A氏宅を訪れた。三人の子供たちは学童保育所へ遊びに行って、A氏一人であった。狭い玄関から直接台所を通って、居間に招かれた。壁に小机を寄せ、その上に写真を置いて、にわか仏壇がしつらえられてあった。写真の前には、枯れかかった花も新しい花もこちゃまぜにして、一杯飾ってある。それがいかにも死者への想いが表われているように、私には感じられた。また、父子家庭の何とも言えぬさびしさが伝わってくるようでもあった。
仏壇の写真を見ると長い髪のかつらをつけてはいるが、とてもかわいく若々しく、亡った無念で涙が出そうになる。
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