特集 子供の成人病予防
子供の居住環境の変貌と肥満
廣嶋 清志
1
1厚生省人口問題研究所
pp.600-604
発行日 1991年8月10日
Published Date 1991/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900282
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居住環境の変貌
子供をとりまく居住環境の子供への影響は,年齢に応じた心身の発達・健康状態として把握できる。もっとも狭い意味での健康状態は,死亡率で表わされる。戦後,乳児死亡率も児童死亡率も目ざましく低下した。1950年から1989年にかけて,乳児死亡率(出生1000対)は60.1から4.6に,児童死亡率(10万人対)は1〜4歳では926.8から44.3に,5〜9歳では207.1から19.2に,10〜14歳では117.4から14.9に,15〜19歳では247.7から44.1に低下した。これは周知のように栄養,医療,公衆衛生とくに上下水道などの改善・普及によってもたらされたものである。その意味で保健的な育児環境は,大いに改善されたといえる。
子供の死因別死亡率をみると,1955年以降「不慮の事故」が最大の死因となっている。その中では,不慮の溺死と交通事故が最大のもので,この2つの死因が不慮の事故の8割を占めている。このことは,子供をとりまく居住環境において,水と自動車の問題が大きいことを如実に示している。日本における水の事故の多さは特異な現象で,畑作を中心とし都市と農村が画然と区別される欧米各国に比べて,日本では多くの水利施設が存在する都市周辺の水田地帯に,住宅開発が急速かつ無秩序に進められた結果であるといえる。
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