特集 臨床検査の新しい展開―環境保全への挑戦
Ⅱ.環境問題と疾病
7.化学物質の環境へのリスク
6)居住環境での化学物質汚染
早福 正孝
1
Masataka SOUFUKU
1
1東京都環境科学研究所応用研究部
pp.1398-1405
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904237
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はじめに
現代社会は,化学物質なくしては成り立たないと言っても過言ではないくらい多くの化学物質に取り囲まれている.化学物質のなかには,医薬品や洗剤のように目的を持って作られるものや,ダイオキシンのように化学反応の途中で非意図的に生成されるものがある.さらに本来の使用目的とは異なる影響を他に与えている農薬・殺虫剤やアスベストのようなものもある.一歩外に出ると,その行き先々で絶えずその地域からなんらかの化学物質に曝露されている.それは,自動車排ガスや工場の排ガスであったり,公園や田畑に散布された農薬類であったりする.
これらの環境汚染に対しては環境基準や排出規制基準などが作られかなり改善された面がある.だが,1日24時間のうち,一人の人が実質的に建物の外にいるのは,特定の野外勤務的な職業やレクリエーション・スポーツといった限定的な面を除くと,それほど多くはない.多くの人は,職場・学校などの建物の中,そして生活の中心である居住環境の中にいる.そのなかでも特に,睡眠や団らんなどを含めた家庭内にいる時間は一日の半分近くになる.特に,老人や乳幼児と母親はその大半を家庭内で過ごしていると言っても過言ではない.
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