特別寄稿
加齢と老年病—独居老人の死亡の現状
徳留 省悟
1
1東京都監察医務院
pp.924-934
発行日 1989年11月10日
Published Date 1989/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207843
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はじめに
日本人の平均寿命は,明治,大正期を通じて低い水準にあった。昭和期にはいると延びはじめ,戦前に作成された最後の生命表である第6回生命表によると男性46.92歳,女性49.63歳であったが,1947年の臨時国勢調査をもとに作成された第8回生命表では,男性50.06歳,女性53.96歳となり,その後1950年に女性の平均寿命が60歳を越え,男性も1951年に60歳を越え,1959年には男性が65歳を越え,1960年に女性が70歳を越えた。さらに1971年には男性70歳,女性75歳を越えた。1984年には女性は80歳を越え,1986年には男性が75歳を越え,1987年簡易生命表によると,男性の平均寿命は75.61歳,女性の平均寿命は81.39歳となり,男女とも今後さらに寿命は延びるものと考えられる。この原因は脳卒中による死亡率低下にみられるように,高齢者の死亡率低下によるところが大きい(表1)。一方,高齢者の有病率はますます増加しており,老年病の対策とその予防は,医療のみならず社会全般にわたって深刻な問題となっている。
わが国の高齢者問題は,老齢人口の増加,家族制度の変革,扶養意識の減退,核家族化の伸展,産業や就業構造の変化,住宅事情の窮迫などによってますますきびしいものとなり,その複雑さを増してきている。
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