研究・調査・報告
在宅ねたきり老人の生活を支えている要因について—生活構造の視点からの文献検討
多田 敏子
1
,
浅海 晶子
2
,
荒木 幸恵
3
,
大政 裕子
4
1徳島大学大学開放実践センター
2愛媛大学医学部付属病院
3徳島県立中央市民病院
4神戸市中央市民病院
pp.335-339
発行日 1989年4月10日
Published Date 1989/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207730
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はじめに
総理府の「家庭基盤の充実に関する世論調査1)」(昭和56年)によると,ねたきりになったさいの介護者として,第1位に配偶者,第2位に,娘,嫁,息子などの家族をあげており,第3位に,施設および家庭奉仕員などの社会への期待があらわれていた。一方,国民生活センターによる「第11回国民生活動向調査2)」(昭和56年)では,回答した主婦の86%が,家庭のなかに介護が必要なねたきりの病人が出た場合,介護は家族,なかでも主婦の役割という考えについて,積極的および消極的に肯定的な回答を示していた。これらは,多くの老人が家庭で世話を受けることを希望し,それを肯定する家庭内での役割関係が根強く残っていることを示していると思われる。老人福祉の動向としても,三浦は「高齢化社会における社会福祉は,在宅福祉を軸とする地域中心の社会福祉(community oriented social welfare)として展開することは,十分に予想することができる3)」と述べている。しかし,在宅ケアの方向への背景には,高齢者人口の増加による老人医療費の増加や社会保障負担の増大があることは,すでに指摘されているとおりである4,5)。同時に近年,家族の看護力が低下していることや6〜9),それを支える在宅サービスのたち遅れについても問題提起されている7)とおりである。
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