特集 老人の在宅ケア(2)各職種の取り組み
〈理学療法士の立場から〉
病院・施設内リハビリと地域リハビリ
沖田 幸治
1
1岐阜リハビリテーション病院
pp.894-896
発行日 1988年10月10日
Published Date 1988/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207617
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はじめに
私は理学療法士として滋賀県の湖東方面に位置する近江温泉病院に6年3か月勤務し,その間,4年あまり保健婦と共に老人保健法に基づく訪問指導と機能訓練事業(リハビリ教室)に携ってきた。地域に出て学ぶことは多くあった。同じ職場の臨床経験2年目になる理学療法士が地域に出はじめてから,目が覚めたと病院での業務にもはりきりだしたことがある。それは病院で行っている理学療法がそのまま役に立ったからではなく,逆に全く違った視点と発想の必要性を迫られ意欲が出てきたのである。
障害者老人にとって病院や施設内での自立と家庭内で自立するということにはかなりの隔りがある。具体的には,病院内では身のまわりのこと,トイレ・食事・更衣動作そして院内の移動(車椅子・歩行器使用を含む)が,ひとりで可能ならば基本的には自立した患者になる。患者同士や職員とのコミュニケーションが少なくとも,その人は無口な人または抑うつ傾向のある患者として扱われ,入院生活自体に破綻を来たすことにはならない。病院では人間性や社会性がメイン・テーマになることは少なく,疾病や身体障害という器質的,機能的な問題が取り上げられる。在宅障害者ではどうであろうか。家庭では家族との人間関係や家庭内での役割の有無そして家族の介助の負担などが大きな問題となる。病院でのそれとは相反する観がある。
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