連載 組織活動・5
母親の育児していく力の形成と組織活動—5.住民組織への働きかけ
鈴木 昭子
1
,
稲垣 ふみえ
2
,
山崎 早苗
3
,
赤部 智子
4
,
古田 真司
5
,
西村 知子
6
,
堀田 美波
7
,
福島 道子
8
,
久常 節子
9
1山形県山形保健所
2静岡県立厚生保育専門学校
3茨城県立水戸看護専門学院
4奈良県立保健婦学院
5名古屋大学医学部公衆衛生学教室
6京都府立医科大学附属看護専門学校
7熊本県立公衆衛生学院
8日本赤十字看護大学
9国立公衆衛生院看護学部
pp.156-161
発行日 1988年2月10日
Published Date 1988/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207489
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はじめに
私達チームの課題は,地域の母子の実態を明らかにしていきながら,地域に,母親の育児する力の形成を可能にする何らかの動きを起こすことであった。私達の母親達への直接的な働きかけによって起きた動きから,課題は,一部達成されたと言えるかもしれない。しかし,こうした母親達の自主的な動きを支える専門職や公的機関が機能していかなければ,自主グループ1つの活動にとどまり地域に拡がらないのみでなくこのグループもいつか消えていってしまうであろう。私達は,当初から,地域における母親と子供の健康や福祉に責任のある保健所,社会福祉協議会(以下,社協と略す)と連携を図り,共に地域の母子の実態を明らかにしながら,活動をすすめていくことを意図的に行なってきた。
前回指摘しているように,私達が直接働きかけることができた母親達は,地域では一見何の問題もなく,自ら仲間づくりを求めることができる条件にある人々であった。私達は,母親の集まりに参加しなかった母親,私達が家庭訪問さえすることができなかった母親の中に,支えていかなければならない対象がいることを知った。たとえば,夫を交通事故で亡くし,精神的ショックから閉じこもりがちな母親,リウマチで思うように体が動かないため,育児の体験談を聞いたり,子供を同年齢の子供と遊ばせたいと思いながらできないでいる母親,母子家庭で働くことに追われ,「育児している実感が持てない」と語った母親がそうである。
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