活動報告
40年間自宅放置されていた精神分裂病患者Yさんを訪問して
蒲 美奈子
1
1岐阜県郡上保健所
pp.999-1004
発行日 1983年12月10日
Published Date 1983/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206763
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.はじめに
精神障害者の放置患者が発見される動機としては,①うわさ,②住民検診,成人病検診時,③事例性が出てきた時の相談や他からの通報,④精神障害者年金などについての相談や受診時などが考えられる。保健婦と精神障害者との出会いも,これらの情報をもとに多くが家庭訪問という形で行われている。その活動の中で40年間も自宅放置され,しかも援助者も家族からも明確に精神病として認識されながらも,決して患者本人は医療の場に出ていない1人の女性と出会った。山奥の開拓地で他人との接触をまったく放棄してしまい,あまりにも閉鎖的で暗い日々は,決して人間的な生活を送っているとは思えない。
現代社会の中で,このような人がどのくらい地域の中にとり残されているかわからない。しかし,長い病歴をもつ患者であっても働きかけによっては患者の人間性の回復が期待できること,発見して援助することで,保健婦自身の技術の向上を期待することができること,そして地域の中にかくされていた患者を援助し,変化させることにより地域の精神衛生レベルが上がることが期待できる。そこで40年間放置されていたこのケースを紹介することで,社会生活の中から隔絶された障害者を見い出す活動のための一考としたい。
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.