書評
"保健活動〈見直し〉の理論と実際"を読んで
井田 直美
1
1大阪府立公衆衛生専門学校
pp.256
発行日 1982年4月10日
Published Date 1982/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206494
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近年の医学・医療の進歩は,人命の救助・延命に著しい成果をもたらした。しかし,その成果は感染症のごとく病因の明確なものに限り,循環器疾患,がん,精神病あるいは難病などのように病因が不明確な疾病には医学,医療の成果は十分といえず,医療や公衆衛生などにその対応としての"発想の転換"をせまっている。その一端として,住民や患者の自助努力の必要性や,健康づくり運動の促進が唱えられるようになった。また,戦後の公衆衛生の進展の中で,私どもは保健活動に関するいくつかの新しい保健用語に遭遇し,その栄枯盛衰をみてきた。従って,新しい保健概念に出会うたびにアレルギー感を催し,公衆衛生の第一線の担い手は,現状の保健体制に窒息感すら抱くようになった。
こういう時期に本書が発刊された意義は,誠に大きいと思える。その意味するところは,第一に本書が1978年にWHO/UNICEFで議決されて,国際的合意を得たPHCの概念を基盤とし,その要点としての①ニード指向性,②地域住民の主体的参加,③資源の有効的活用,④活動における協調・統合という四つの原則に日本的展開を加えたことである。
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