海外レポート
曲がり角にきたアメリカの地域精神医療
稲岡 文昭
1,2
1Crotona Park Community Mental Health Center
2Sigma Theta Tau
pp.858-863
発行日 1981年10月10日
Published Date 1981/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206425
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はじめに
ベラックというアメリカの精神科医は,18世紀末のビセトール病院におけるピネルの行動に象徴される一連の道徳療法の動きを《第1の精神医療の革命》,フロイドを中心とする精神分析学の体系化と力動精神医学,精神療法の基礎づけを《第2の精神医療の革命》,そして1963年以来のアメリカの地域精神医療の活動を《第3の精神医療の革命》と呼んでいる。しかしながら《第3の精神医療革命》の発端から約30年経過した昨今,Deinstitutionalizationということばで代表される地域精神医療は,精神医療界のみでなく行政界でも一般社会でも大きな論争の的となっている。一部の精神科医から《奇跡的な治療法》とまで騒がれたDeinstitutionalizationがわずか数十年でなぜその危機にたたされるにいたったか,歴史的背景,政治・経済・社会的な動きも含めて考察してみたいと思う。日本の地域精神医療の発展に何か参考になれば幸いである。
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