調査研究
高血圧者の地域看護に関する研究—要治療者の保健・医療行動の実態と中断者の追跡調査
山本 幸枝
1
,
藤下 ゆり子
1
,
太田 和子
1
,
鏡森 定信
2
1福井県武生保健所
2金沢大学医学部公衆衛生
pp.622-631
発行日 1980年8月10日
Published Date 1980/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206281
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I.序 言
わが国の最近の平均寿命の延長および疾病構造の変化による慢性疾患の増加など,公衆衛生活動の中での加齢に伴う成人病対策の占める割合が増加してきている。わが国にはこれまでに急性伝染病および慢性伝染病である結核の対策として,集団を対象とした疾病管理方式の成果では大きいものがあった。しかし,現在の成人病をはじめとする慢性疾患においては,従来の伝染病と違い,その特殊性により,生活規制,生活環境に依存する部分が多いことから,その対象の生活にそくした疾病管理,新しい方策の見直しと対応の方向の転換が求められている。
わが国の循環器疾患には高血圧が深く関与しているが,この高血圧には有効な治療法があり,しかも継続は脳心事故の予防につながることは疫学的および実験的研究により明らかにされているにもかかわらず,一般に高血圧の治療の継続者は少ない。この高血圧の地域管理を目的として福井県南条町の農村地区において,昭和42年より循環器を中心とした検診を実施してきた。高血圧を中心とした検診およびその後の地域看護の評価の一環として,検診で発見された高血圧老の最近3年間の医療行動を調査し,その中で家族の支持が高血圧の知識よりも医療行動を左右する要因として重要であることをすでに報告した1)。今回は全住民を対象として高血圧の治療継続を阻害する諸要因を明らかにするために調査を行ったので報告する。
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