特集 成人保健と保健婦活動=1
調査研究
脳卒中患者退院後のADL低下要因について—身体的,精神的側面および生活状況からの考察
河野 保子
1
,
山田 民子
1
1金沢大学医療技術短期大学部看護学科
pp.258-268
発行日 1977年5月10日
Published Date 1977/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205848
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はじめに
脳卒中はわが国における発生頻度の高い疾患で,昭和26年以来死亡原因の第1位を占め,国民の保健医療を考えるときもっとも重要な疾患として位置づけされてくる。また,脳卒中患者を予防治療,リハビリテーション予後などからながめた場合,継続した体制が必要で,再発作・合併症に対する心配,片麻痺など運動機能障害のため長期にわたり機能訓練を受けなければならないという困難な問題が生じてくる。さらに,脳卒中の発生は,中年期・老年期に多く,家庭生活・職場復帰などにおいては医療以外の諸要素を考慮した国の福祉政策にもつながる社会問題でもあり,脳卒中患者に対する援助の困難さをさらに複雑にしているものともいえる。
国民衛生の動向1)によれば,昭和49年の"中枢神経系の血管損傷"による死亡数は178,365人で,総死亡数の1/4を上回っており,また,中枢神経系の血管損傷の罹患状況については確かな実態は把握されてはいない。その一例として,厚生省の"患者調査"によると,昭和49年7月のある一日の断面で医療機関に受診した循環器疾患患者数のうち,脳血管疾患患者数16万8千人,高血圧性疾患患者数49万6千人で,将来卒中発作の危険がある者,脳卒中後遺症患者が相当数存在していることが推測できる。
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