特集 実践交流から理論化へ—主体的保健婦活動論の組み立て 第8回自治体に働く保健婦のつどい集録
記念講演
福祉見直し論と医療の公的責任
小川 政亮
1
1日本社会事業大学
pp.565-574
発行日 1976年8月10日
Published Date 1976/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205752
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堀木訴訟がもたらしたもの
高福祉・高負担,実は低福祉・高負担に
私は主として社会保障関係,特に生活保護関係の法的諸問題についての勉強をやっています。そういった観点から,何か皆さんのお役に立つようなことができればいいと思っております。
昨年11月10日に,大阪高等裁判所で判決がありました。これはご承知だと思うのですけども,例の堀木訴訟二審判決です。全盲の女性堀木文子さんが夫と離婚をして女手一つで子供を育てていました。母子世帯には児童扶養手当法による児童扶養手当が出るのじゃないかということを聞いて,彼女は神戸の人ですから,兵庫県知事に手当受給資格認定の請求をしたところが,だめだといって却下されました。その理由は,当時のこの法律には,母が他の公的年金を受けているときには児童扶養手当を支給しないという規定があり,彼女は全盲ですから,国民年金法で障害福祉年金を受けていたのが,それに該当するからという理由です。普通の母子世帯でも大変なのに,彼女は全盲ですからもっと大変です。したがって当然年金と手当の両方もらえると思っていたのに拒否されたので,彼女は,兵庫県知事を被告として神戸地方裁判所に訴えを起こしました。ご承知の方も多いかと思いますけれども,昭和47年9月20日に,神戸地裁は彼女の言い分を認めて,児童扶養手当を支給しないという処分を取り消す,という判決をしました。
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