発言あり
福祉見直し論
む
,
く
,
の
,
を
,
ゐ
,
辻 達彦
1
,
根木 博司
2
,
花田 ミキ
3
,
松崎 奈々子
4
,
簑輪 真澄
5
1群馬大・公衆衛生
2東京都老人総合研究所・社会学
3青森県立高等看護学院
4東京都教育庁・体育部
5石川県輪島保健所
pp.7-9
発行日 1977年1月15日
Published Date 1977/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205316
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福祉の原点をさぐる
「福祉」とは辞書によると幸福,仕合わせよきことである.幸福と別な意味ではないが,行政用語として定着している.もともと,幸(さち)とは漁または狩りで獲物のあることであり,結局,めぐりあい,運・不運ということに通じている(happyもまた原義はsuitable,fortunateであるから似ている).わが国の福祉行政は発育途上の未熟なものや,社会的弱者,健康不在者に対する特殊な配慮を背景にしている.これが果たして,常に人々の幸福につながるかどうかの反省は,ここでいう福祉見直し論の論拠ともなる.昔から福禄寿がひとの願いであるが,幸福を量産することは至難である.
ある老人クラブを調査したとき,毎日が楽しいと答えるひとは多いが,毎日が楽しくないとするものが約5%にみられた.その理由の多くは,健康面よりも精神的なもので,妻子がない,友人がいないなど,孤独によるものが推定される.えてして,公衆衛生関係者はあまりに保健ということを強調しすぎるきらいがあり,すでに健康を失っているものに,抵抗・反感をいだかせやすい.これは,衛生教育のあり方で反省させられている点である.優先すべきは毎日の楽しさで,健康はそのすべてではない,ということに尽きるようである.
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