特集 自然毒食中毒
自然毒食中毒の防止と公的責任
阿彦 忠之
1
,
笠原 義正
1
1山形県衛生研究所
pp.353-356
発行日 2009年5月15日
Published Date 2009/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101555
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自然毒による食中毒を防止するための公的施策としては,フグ毒のように調理に関する業務独占資格(条例による免許制度等)を設ける方法,および貝毒のように生産海域におけるモニタリングとその結果に応じた出荷規制を行う方法などがある.
一方,きのこや山菜等の植物が関連した食中毒の防止については,調理資格やモニタリングによる規制制度がないため,山菜等の採取者あるいは調理者個々人の知識に頼る面が大きい.しかしながら,植物性自然毒(以下,植物毒)による食中毒では,同じ種類の植物による事例が繰り返されており,山菜等採取時の誤認の経緯や採取場所の環境などにも類似点が多い.食文化との関連で,原因植物の種類には地域的な特徴が見られるので,各地域の公衆衛生機関(保健所,地方衛生研究所)が健康危機管理業務の一環として,中毒事例に関する情報を収集・分析し,その結果に基づく予防方法の提案や啓発資料の作成,および人材育成などに取り組むことが重要と考える.
そこで本稿では,自然毒の中でも植物毒による食中毒に焦点を当て,国内における最近の中毒事例の要因や特徴などを概観したうえで,植物毒食中毒を防止するための公的施策のあり方を提案したい.また,植物毒食中毒の発生件数が最も多い地域の1つである山形県において,衛生研究所が取り組んでいる中毒防止のための情報収集や啓発活動について紹介する.
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