今月の主題 内科医のための癌治療のオリエンテーション
癌合併症とその対策
癌性胸膜炎,癌性心嚢炎,癌性腹膜炎
西尾 剛毅
1
1聖路加国際病院・外科
pp.271-275
発行日 1989年2月10日
Published Date 1989/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222324
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癌の進行,転移の仕方には種々あるが,血行性遠隔転移とともに,腹腔,胸腔,心嚢腔への浸潤,転移では,癌の根治は全く不可能で,また余命も限られた状態である.このような体腔に転移したものを癌性腹膜炎,胸膜炎,心嚢炎と呼ぶ.ここへの浸潤,転移は癌が臓器の漿膜外へ浸潤して転移したり,こぼれて広がったもの(播種性転移)と,リンパ管を通って腹膜,胸膜の表面のリンパ組織に転移したもの(癌性リンパ管炎)の2つがある.どちらで起こっても,腹膜,胸膜,心嚢膜(ここでは一括し,漿膜と呼ぶ.)の本来持っている体液の分泌,吸収の機能を破壊するため,大量の癌性体腔液の貯留を来す(表1).
さきに述べたように,根治は不可能で,余命も限られていることから,対症療法(大量の体腔液を減らす)が主になるが,治療もなかなか効果的でなく,退院できないことも少なくない.
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