連載 訪問看護を確立するまで—京都・堀川病院の地域医療活動・1【新連載】
訪問看護と病院の歩み
早川 一光
1
,
谷口 政春
1
,
石井 松代
1
,
城ケ野 芙美子
1
,
斉藤 貞夫
3
1堀川病院
3堀川病院事務・医事部
pp.81-85
発行日 1976年2月10日
Published Date 1976/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205680
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1.はじめに――訪問看護に取り組んで
「変わりおへん」
急に大きくなったガチャコンというハタ音を顔にあびながら,今日も自分の家の戸をあけるように,格子戸をガタピシとあけた。「おばあチャン,どーえ?」と,ハタ音をおしかえすように大きな声で問いかけると,「変わりおへん!」と相変おらずそっけない返事が,最近福祉事務所に頼んで運びこんだベッドの上から,かえってきた。卒中で倒れて8年,やっと部屋に持ちこんだ腰かけ便器に,ひとりでまたげるようになったこのおばあチャンの歩みが,実は私たち病院の歩みでもあるようだ。「変わりおへん」と変わらない返事を何百回と聞きながら,病院とおばあさんの家を,西陣織りのオサ(横糸の中を左右に動く)のように往復しつつ,おばあさんと2人で織ったつづれ織りのような看護でもあるようだ。
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