連載 現代の看護労働試論・5
看護職の社会・労働運動をめぐる問題—一つの仮説構想の試み
宗像 恒次
1
1日本看護協会・社会学
pp.86-91
発行日 1976年2月10日
Published Date 1976/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205681
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看護職の社会・労働運動論における分析機軸
私達は看護職の労働問題に論及する際,大きく分けて次の二つの視角から検討しようとしてきている。すなわち,まず第1には看護労働の担う実際上の"責任"が,看護職の生活人としての"権利"を侵害してはいないだろうか,という視角であり,第2には看護労働の"責任"にみあった"権限や機会"が保証されているのか,という視角である。そして,それらの視角からそれぞれは生活(健康,結婚,育児)問題と労働疎外問題として論考してきている。しかしそれらの視角をめぐっては,問題解決の主体たる看護職内部において相剋しあう意識や姿勢がみられ,それが労働問題の解決過程での動学的問題因を形づくっている。
前号ではこれらの主題について論述した。すなわち,看護職は統計集団的にみると,看護労働の担う社会的責任に強い関心を示す層と,労働者の健康や生活をめぐる"権利"及び看護上の責任を履行するうえで必要不可欠とみられる"権限や機会"により強い関心を示す層とに分かれ,相互が自己の関心を他方に強調することに執着するため,迂回的には自らの問題の解決を自らが妨げるような自己疎外的状況を生みだしているということである。ちなみに前号では前者の層が教育職・管理職・看護職層であり,後者の層が非管理職・准看護婦層であることを実証しようとした。
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