連載 健康論・2
健康論(2)
中島 紀恵子
1
1千葉大学教育学部特別教科(看護)教員養成課程
pp.161-165
発行日 1975年3月10日
Published Date 1975/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205583
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III.健康権について
1.医療従事者と患者の人権
医療する側が,又は生活保障を義務とする側が,個々人に即して価値判断をするために,ある基準となるものを避けることはできない。これは,人間を科学技術的にあつかう者のもつ宿命であるといえる。この基準は最低限,"生きていることはいいことだ","人を死なせないことはいいことだ"1)という前提のもとにおかれていなければならない。
しかし私達は,企業の場において,労働力がますます商品化される傾向と同時的に,人間性が疎外されていく関係を,あやうく見落としがちである。即ら,使用者が求めている労働適応可能グループの選択基準に強く影響を受け,労働不適応者や労働不能力者(疾病や疾病以外の作業不能者)の健康状況にまで基準を広げたり深めたりできないということである。その結果,真に社会生活活動が不可能な人の存在する状況を防止することや,除去したりすることに,国民の健康状況の基準と目標を設定してしまうことになる。
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