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はじめに
「攻めの地域介護予防」。なんて大きく出たタイトル。そしてその後の「健康生成論」,いったいそれは何なんだ?
この記事を読み始めた読者の方がそう思っている顔が目に浮かんできます。本連載の企画書を見た時,むしろ私がそう思ったくらいでした。
でも,これは現在弊社の事業所で行っている,地域に提供しているリハビリテーションの根幹を成しているもので,この2つの要素なくして地域リハビリテーションはありえません。
なぜPTでもOTでもSTでもなく,医師でも看護師でもない,一企業の経営者である私がこれらについて説明するのか。これらの説明をする前に,まずは自己紹介をさせてください。
私は医療機器メーカーで技術開発の仕事に十数年携わってきました。医療機器は人の命を救うという崇高な使命を持った製品で,入社当時はその開発に携わることに誇りと責任を持って仕事をしていました。ところが,ある時,自分の開発した機器を持って病院へ意見を聞きに行ったところ,自分の製品がもう長いこと意識のない方,いわゆる植物状態の方の検査に使われていました。身動き一つできないその方の横には,疲れ果てた顔をしたご家族が,心配も希望も感じられない雰囲気で付き添っていました。
この時,医療機器が救っている命は確かに大事だけど,こういう救われ方で良いのだろうか,人が生きるとはもっと違う意味があるのではないかと気づかされました。
メーカーとしてやむを得ないのですが,利益を考えると9割の人に合うものづくりを目指すことしかできず,1割の対象外となる患者さんのことを悶々と考えることがありました。
もっと人が人らしく生きるために,その1割の人に合うものづくりの仕事をする人間が一人くらいいても良いだろうと思い,一念発起して独立・起業し,福祉用具販売・貸与と製作をする会社として「モノ・ウェルビーイング」を立ち上げました。ちなみにモノ・ウェルビーイングの社名ですが,モノで人をより良く暮らせるようにする(Well Being)という意味を持っています。
とは言え,そんなシステムも市場も日本にはありません。そこで,海外ならそんなシステムがある国がどこかにあるはずだと探し回った末,北欧の国にはそんなシステムがありそうだということがわかり,スウェーデン大使館とデンマーク大使館へ飛び込みました。
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