食と保健指導
公衆衛生学の盲点—地域小集団における保健指導の評価尺度(3)
豊川 裕之
1
1東京大学医学部保健学科
pp.762-768
発行日 1973年10月10日
Published Date 1973/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205373
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一般に健康状態や健康度を叙述したり把握したりする際に,数量的にする場合と質的にする場合とがあることを前回に述べた。実際にわたくし達が保健指導をするときには,それらの2通りの方法を適宜使い分けているのであるが,その使い分けは地域集団に対する認識の仕方によって決まっている。つまり,個人に対する保健指導の際の認識が――個人レベルの健康認識が――質的な把握と叙述を必要としており1),集団に対する健康認識が数量的な把握と叙述を要求している。そして集団の人口規模が大きいほどその傾向が強いといえる2)。なぜそうなるのかということは,説明がむずかしい,というよりはわからないというのが本音である。人の生命がなぜ尊いのかわからないと同じであるように思う。
とにかくわたくし達はそのように個人の健康については質的表現を通して考え,国民や県民のような大きい集団の健康については数量的に考えているのである。もちろん統計学の存在がそうさせているのかもしれないが,逆にそのような認識が一般的であるために統計学が発達したのかもしれないので,ここではこれ以上の詮索はしない。それというのも幼児が母親に"なぜネコにはおヒゲがあるの?"
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