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はじめに
新聞の投稿記事に,ラグビーにおけるニュージーランドと日本との考え方の違いを論じたものがあった(朝日新聞「論壇」欄,大谷悟氏の投稿,1984年1月6日掲載).その主旨は,ラグビーはチームプレーを基本とするゲームではあるが,ニュージーランドでは優れた個人技術を重視し,個の集まりとしてチームを見るのに対して,日本のラグビーは個よりも集団を重視し,集団のための個人技を尊重する傾向が強いのではないかと分析し,そこから,最近の日本の青年たちの「集団主義の安易な受容傾向」への危惧の念を述べられたものである.
現代の青年が,全体主義的な集団運営を安易に受容する傾向が強いか否かはとにかくとして,集団の運営に際して,集団の効率のために個人の成長を求めることに力点をおく場合と,個人の成長が中心的テーマで,それを促進させるものとして集団を位置づける場合とがあることに,この投書は気付かせてくれた.もちろん,ラグビーは本来,集団的スポーツであり,相手チームに勝つことを求められるものだから,ニュージーランドの場合でも,集団が個人技上達の促進剤に過ぎないものとして扱われているわけではない.したがって,この投稿記事から,for the groupの集団運営と,for the individualの集団運営がありうるという結論を引き出すのは,筋違いなのかも知れない.ただ,ラグビーというようなチームプレー中心のスポーツでも,その運営のしかたに個人主義か集団主義中心かの違いがあるという指摘を出発点として,同じように集団運営を必要とする場面にも,個人の成長が主眼となるものと,集団としての活動の効率が重視されるものとがあることも事実である点に注目する必要もあろうと考えたのである.
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