連載 食と保健指導【新連載】
公衆衛生学の盲点—地域小集団における保健指導の評価尺度(1)
豊川 裕之
1
1東京大学・医学部保健学科疫学教室
pp.884-887
発行日 1973年8月10日
Published Date 1973/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205339
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はじめに
もし,いま,あなたがある地域で公衆衛生活動に従事しているとしよう。それは事業所でもなく,学校でも,施設でもない,ごく一般的な地域集団を対象にしているということである。
そこに保健婦として働くあなたがいろいろな矛盾を感じ,いろいろな障害を体験して困惑していることは容易に想像できる。その矛盾は保健婦としての活動が地域住民の健康を守り,向上させることにどれだけ貢献しているのか,自分ではよくわからないことによる不安という形をとったり,自分の目の前に現にいる病んでいる人,弱わりきっている人,困窮している人を,結局は傍観しているにすぎないことによる無力感と悲歎であったり,更には,それらを長年耐えてぎたベテランの保健婦の涙が涸渇した後のあきらめに似たものであったりする。そして,若い気鋭の保健婦にとっては,もっていきどころのない怒りとなって噴火することもある。このような不安と悲しみとあきらめと怒りを,本誌のなかにも随所に見つけることができる。
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