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世界を見る目の視点
久米 茂
1
1深夜通信
pp.65
発行日 1972年5月10日
Published Date 1972/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205087
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暮らしに密接な軍事基地問題
去る6月11日,立川市の砂川町で"ベトナム出撃に抗議する全都総決起集会"というのが開かれた。約2万人の都民が集まって,東京の基地からベトナムに飛び立つ米軍機や米軍需物資輸送列車に反対しよう,自衛隊の沖縄配備,立川移駐に抗議しよう……との決議や意思表示をしたあと,2コースに分かれてデモをした。また,この会場から数百メートル離れた広場では,500人ぐらいのベ平連系の集会がもたれた。
私は軍事問題や基地問題はしろうとである。だが,私の住む町に厚木基地という米海軍の根拠地があり,この数年,住民の"基地を返せ""基地をなくして住宅地や公園に転用せよ"という行動が出てきたことに影響されて,この種の問題に関心を抱かざるをえないはめに追い込まれた。上記の集会に参加したのも,その関心の表白である。しかし正直なところ,軍事・基地に関する問題は,ただ関心をもつ,デモに加わる,関係の本を読む,といったことぐらいでわかることではない。わかることではないが,しかし私たちの暮らしと日本の将来に切りはなしがたい問題なのでやっかいである。軍事専門家,国際問題研究家といわれる人々でも,ひとたび軍事と生活,戦争と日本の運命のかかわりは,といったことの予測や予見について確たるものがあるかというと,私の知るかぎりでは,心細い印象しか受けない。
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