連載 ニュースウォーク・80
世界を見る目,日本を見る目―人口白書から世界基金まで
白井 正夫
1
1元朝日新聞編集委員
pp.1144-1145
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100601
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南米のアルゼンチン,パラグアイ,ブラジル3国国境にあるイグアスの滝に行ったことがある。しぶきがそのまま天にわき上がって雲になる世界一の大瀑布である。3年前,私が入ったアルゼンチン側は一帯が国立公園で,ホテルも1か所あるだけ。滝へ向かうにも戻るにも,ときおり大トカゲが出没する原生林の道を往来する。
そんな道を足早に歩いていたとき,道端に机を置いた白衣の女性に出くわした。見るからに看護師さんスタイルで,机には血圧計らしきもの1個が置いてある。スペイン語で血圧のことをtensionというが,木にくくりつけた段ボール片にはその言葉が読める。は,はーん,イグアス見学には「血圧ご用心」というわけか。でもおかしい,若くもない彼女はただ立っているだけで,東洋人の顔にニコリともしない。戻ったホテルでは,新手のもの乞い説と看護師さんのボランティア説という2つの話を聞いた。いまもこの話になると,ボランティア説に首をかしげる。南米の街角や集落であまりにも貧しい人々を見てきた先入観があるのかも知れないが。
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