ニュース診断
"機密文書"事件を考える
久米 茂
1
1深夜通信
pp.59
発行日 1972年4月10日
Published Date 1972/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205072
- 有料閲覧
- 文献概要
抹殺された婦人労働者の人権
外務省の公電漏洩事件で蓮見という女性が逮捕され,起訴された。世人は"知る権利"がどうだこうだと騒いでいる。ジャーナリストは"報道の自由侵害"云々といいたてている。こうした視点に私は賛成しないではない。しかし私の心をとらえているのは別のことである。それは1人の婦人労働者がチリ・アクタのようにふみつけられているという事実である。この女性の人権が,存在そのものが抹殺されようとしていることが私には深刻である。それなのに世間は彼女の人権を回復させる,存在をとり返すという方向でこの事件をみようとはしない。みんなどうかしていやしないか?
秘密文書なるものが横路代議士によってバクロされてから,彼女が逮捕されるまで1週間とたたなかった。そして懲戒免職となるまで10日もたたなかった。そのスピーディな処置は,日ごろ万事にスローモーな役所の仕事ぶりとはきわだって対照的であったが,世間はこのことをさほど重視しなかった。
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.