日本列島
ある殺傷事件について
伊波 茂雄
1
1沖縄県保健医療福祉事業団
pp.27
発行日 1985年1月15日
Published Date 1985/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206979
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沖縄
昭和59年7月,那覇市内の市営住宅内の路上において,果物ナイフを持った若い男が通行人を次々と襲う殺傷事件があった.この事件で,たまたま同団地を訪ねた49歳の男性が左胸を刺され出血多量で死亡し,また5歳の男の子が背中を刺されて重傷を負ったほか,中学生(女子)2人,4歳男子1人,57歳と33歳の女性がそれぞれ背中,腕,胸などを刺された.この若い男は傷害の現行犯(のちに殺人と殺人未遂に切り替えられた)で逮捕されたが,新聞報道によると「テレビ」を見ていて幻覚を生じ犯行に及んだという.その後の警察の調査によると,逮捕された男は22歳で,4年ほど前から精神病院への入退院を繰り返しており,昨年も4月から約4ヵ月入院していたとのことである.また,自宅でもテレビとけんかし,母親や兄にも暴力をふるったことがあったという.病院に行くことを嫌がり,家族も対応に苦労していたようである.病院から逃げ出して看護士に連れてゆかれることもあったという.
この事件は関係者に大きなショックを与え,県当局では精神衛生関係者による対策が協議され,実態と問題点の究明と,今後の発生防止策が検討された.
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