資料 健康管理論 序論2
二つの健康管理のパターン
田中 恒男
1
1東大医学部保健学科
pp.40-43,47
発行日 1972年1月10日
Published Date 1972/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205016
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わが国における健康管理の導入
健康管理という用語には,必ずしも双手をあげて賛成できぬという人のなかに,その導入期の暗いイメージをもつ人が少なくないはずである。たしかに健康管理をhealth controlと訳す人がまだいるように,導入期のそれはコントロールそのものだった。わが国が第一次世界大戦の後をうけて,経済大国・軍事大国化していく過程で,人間の生命が物質視され,戦力・生産力の部分品としかみられぬような時期に,健康管理という用語が定着し始める。この概念は,まさに品質管理のそれであった。
保健婦規則が制定される前後,すなわち第二次世界大戦に突入しようとする軍国主義化のなかで,国家総動員法・国民体力法などとあいついで制定された法律は,いずれも健康に一つの基準を設け,脱落者をきびしく訓練し,国家目的に沿った健康の形成に努力せざるをえない状況にあった。とりわけ,生産にいそしむ工場労働者の生産力増強の目的のもとに,健康管理と称する活動が展開されたのである。
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