Japanese
English
解説
呼吸のパターン
Pattern of Breathing
玉谷 青史
1
Seiji Tamaya
1
1東海大学救急医学科
1Department of Emergency and Critical Care Medicine, Tokai University
pp.1037-1045
発行日 1987年10月15日
Published Date 1987/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205129
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
人の一生はspirit(魂)を吸い込み(inspire),産声を上げることに始まる。小児では小動物のように早く浅い呼吸を行い時に泣き叫び,成人では消失するいくつかの原始的な呼吸反射を有する。2〜3歳になって肺と上気道の構造と調節機能が発育すると言葉を話し始める。人生幾多の場面で"間"をとること,すなわち息をコントロールすることが必要になる。音楽はもちろん,運動でもリズムの重要性は明らかである1)。人の呼吸調節には本能的に備わっているいくつかの反射調節と後天性の調節機能があるのでより複雑になる。発熱,運動,あるいは代謝の亢進は大きな換気量を要求する。呼吸器に疾患があると残された換気能力でその需要に答えるため,肺線維症に見られる頻呼吸,肺気腫の呼息の延長など特別な呼吸パターンを行う。そして最後の息(魂)を吐き出す(expire)まで一生におよそ8億回の呼吸運動を行う勘定になる。その間早く浅い呼吸,深く遅い呼吸の両極端に代表されるVTと呼吸数の組合せは無限である。人の呼吸調節には神経調節と化学調節の2系統の存在が確認されている。後者は肺胞換気量を決定し,前者はどのように換気を行うか,すなわち呼吸パターンに深く関わっていると考えられる。呼吸調節では中枢の制御機構をblack boxとして扱うことが多いが,本稿では人の呼吸調節は最高に発達した機能であるという前提で,動物の進化途上に見られる原始的な呼吸調節機能の目的と調節因子に関する資料を元に呼吸の深さとタイミングがどのように決定されているかを解説した。
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.