Medical Topics
有機燐農薬による眼病
石川 哲
1
1北里大学医学部眼科
pp.58-59
発行日 1971年4月10日
Published Date 1971/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204906
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はじめに
近頃農薬がわれわれの身辺をおびやかしている。母乳,しかも都会の母親の母乳から,外国の約50倍ものBHCが検出されたり,きゅうりからはアルドリン,ディルドリン,エンドリンなどの猛毒物質が出て来たり……これでは一般市民は一体何を食べたらよいのだろうか? その記事が出る度にそれらの農薬に関係あるお役人の言う言葉は決って次のごとくである。①データーを慎重に検討する ②この位の量なら人体にまず影響はないであろう云々である。
私はこの2つの意見が非常に重大な意味を持つと思う。データーを慎重に云々と言う陰には色々な意味がある。ひとつは,彼等にそれを裏づけるデーターが全くないからこれからやって見るかという考えと,あのデーターはどうもあやしいから検討して見るという疑いの目で見ている場合を示している。他のこの位の量なら云々は全く人を馬鹿にしたもので,当方にはその中毒に対するデーターがないが,例えばの慢性中毒の人に対するものなどはデーターがあるはずがないので,人々を驚かさぬためと,自分が物を言ってボロをなるべく出さぬために言う決ったセリフに過ぎない。
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