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緒言
近年有機燐剤が殺虫薬として農村のみならず都会においても頻繁に使用されるようになつた結果,それに原因する急性中毒例の報告は非常に多い1)。これに反し,慢性中毒についての事例は非常に少なく2)3),ほとんどその存在が明らかにされていなかつた。しかし,わが国では石川が1969年4),佐久地方の小児における多発例を報告して以来,かなりの症例が発表されている5)〜7)。われわれは,大人の慢性有機燐中毒を疑われた2症例を経験し,これに対してコリンエステラーゼの再活性化剤のPAM (pralidoxime methiodide)の点滴静注を中心とした治療を行ない,治癒せしめることができたので報告する。今回は,慢性中毒の決定に重要な役割を有するこれらの症例の治療経過期間中,一眼の調節刺激に対する他眼の調節反応(以下A/A)の変化を調べた結果を紹介し,あわせてその間の血中コリンエステラーゼ値の推移,さらにガスクロマトグラフィーにより患者の尿中および汚染源と考えられた飲料地下水,および朝鮮人じんより有機燐がかなりの量で検出されたので紹介する。
なお調節刺激に対する調節反応についてのすぐれた研究はRipps9)らによつてなされたが,これを臨床に直接応用し,しかも長期経過を追跡したものはなく,この検査を有機燐中毒患者の症例で行なつた結果,きわめて興味ある知見が得られたので,その点について特に強調する。
Two adult cases of chronically induced orga-no phosphorous poisoning mainly parathion are described with special reference to the eye symp-toms. Those patients showed corneal astigma-tism, myopia and constriction of the visual field. In addition to these symptoms, they had gait disturbance and persistent diarrhoea.
Accommodative response as a function of the stimulus to accommodation was examined in both cases. Accommodative responses were po-tentiated during the early stage of treatment, and they were gradually normalized with the improvement of vision following pralidoxime (PAM) administration.
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